男声合唱プロジェクトYARO会

第3回合同練習

〔一般公開 彩の国さいたま芸術劇場・大練習室 11月20日


2005年11月23日)

 

 

 12月のコンサート本番に向けた3回目のYARO会合同練習を行った。今回は初の試みとして練習を一般公開したが、果たしてどれだけの人が来てくれるやら見当もつかず、準備する椅子も様子を見ながら借りることにしていた。本番ではないから誰も来てくれなくても、それはそれでいいだろうと観念していた、いざフタを開けてみれば、そんな心配が杞憂に過ぎなかったことがわかりホッとした。うれしいことに、一般の方に交じって高校生が十数人も参加してくれたのである。若い人たちとの交流を願っているYARO会にとってこれ以上のことはない。今年2月に開催した「多田武彦合唱講習会」にも多くの高校生諸君が参加してくれた。YARO会の活動をつぶさに見てもらうことで、年齢を超えて共感しあえるものがあることを実感してほしいと願っている。勉強と両立しながらの音楽活動は、きっと彼らにとって無駄にはならないと信ずる。
 また今回は、作曲家の多田武彦先生がYARO会のために作ってくれた新曲『秩父音頭』の指導もあり、私自身初めての経験となる「初演」を目指して興味が尽きないものである。

 合同練習は、団内指揮者の須田信男さんの指導で発声練習を行い、次いで大岩篤郎先生による『月光とピエロ』の演奏に入った。2年前の最初のコンサートのときと比べて一段とアンサンブルが良くなっているのを感じるが、これは、パートごとにひとつにまとめよう、自分の声を溶け込ませようという意識が醸成されてきた結果であろう。日頃別々の合唱団で歌っているときのままで、YARO会合同を歌ってもそう簡単には溶け合わない。隣りの人、パート全体、さらには隣りのパートを、と聴き合う意識をつねに絶やさないことである。
 大岩先生からたくさんの注文や指示があり、さらには宿題もあるし積み残しもあった。そこで問題となるのは、合同練習を欠席した人である。指示された細かなニュアンスや約束ごとがどこまで欠席者に伝わるかである。もう一人の団内指揮者村上弘さんが、練習のたびに指示の細部までレポートをまとめて各団に配信してくれるが、それがどこまで活かされるか、大岩先生はとくにこの点を懸念しておられる。各団での徹底が望まれるところである。

 多田先生による『秩父音頭』の指導は、練習の後半でやっていただくようお願いし、多田先生がお出でになる前に少し歌っておいてから始めようと予定していたが、成り行きで『月光とピエロ』が終わったところでいきなりやることとなってしまった。まあこの程度のことは想定の範囲であり、やむをえない。
 多田先生は、発声の問題、アンサンブルの作り方、表現のし方など、合唱の基本的な留意事項も織り交ぜながら、『秩父音頭』作曲の意図や狙いについて話された。多田先生は、音楽表現のなかでも、とくに言葉の処理のし方を大切にする。ポイントごとに演奏を止めながらコメントをつけ、指示が出された。それを大岩先生が的確な指揮でまとめ上げていった。
 曲が一本調子にならないようにするために、曲の中にはある程度捨て石になる部分、言葉を変えれば軽く流す部分もある。多田先生は、一番聴かせたい箇所を強調するために、そのような抜いてよい部分を随所に盛り込んでいる。
 また、発声の問題について、音程が定まらないのは、往々にして「声区」の移動がきちんとできていないことによるとの指摘があった。声区については、畑中良輔先生から次のように教えられたという。畑中先生によれば、声は、上から高声区(頭声区)、中声区、低声区(胸声区)の3つに分けられるが、さらにそれぞれを4つに細分し、合わせて12個のスピーカーを持たねばならない。この点については、大岩先生も「一つひとつの音は別のもの」という表現をすることがあるが、いずれも基本的には同じことを表現しているのであり、スピーカーの切り替えがきちんとできないと正しい音程は得られない
 たとえば、ドファのように5度下の音に下がる場合、のままのポジションでいきなり下のファを歌っても正しい音程は得られず、パート内がバラバラとなってしまう。そのようなときには、全員が声区を意識して正しいスピーカーに切り替えてから歌わなければならない。

 民謡で意外と難しいのは、合いの手や語りの部分であろうか。やはり合唱であるからには、この部分も声楽的に演奏され、語られなければならない。とくに音の高さの指示があるわけではないからといって、パート内が揃わないのも困る。どうすれば統一感を出せるのか、今後の課題である。
 次回の合同練習は、12月3日(土)に栗橋町総合文化会館イリスホールで行う予定である。